これまで、電力会社や役所は「日本の原子力発電所は何重にも安全装置を持ち、考えられる限り最大の地震が来たとしても放射能漏れがあるようなことはないように設計されているので、(毒性の高い)MOX燃料を使おうがウランを使おうが安全性に違いはない」などと言い続けて来たわけだが、今回の原発災害でいかにそれがいかに詭弁であったかが証明されてしまった。
確かに、今回の巨大津波を引き起こした地震は100年に一度の「想定外」の大きさの地震ではあったが、100年に一度であろうと1000年に一度であろうと、巨大地震の可能性は決してゼロではなく、どんなに強固に作ろうと「絶対安全」ということはありえない。その意味では、「今回はたまたまたま運が悪かっただけで、これは天災」という考えは大きな誤りで、やはり今回の 原発災害は「悪魔に魂を売って安くエネルギーを得る」道を選んだゆえに生じた「人災」だと認識すべきである。これを関係者一同だけでなく、今まで「原発反対運動」を他人事のように横目で見ながら電気を無駄使いしてきた私たち全員が、深く反省すべきである 。
特に、使用済み燃料という「死の灰」を毎年大量に生み出し続けながら、それを「中間貯蔵」(「何年後・何十年後かにたぶんするだろう最終的な核廃棄物処理までの間の貯蔵という意味」。ここでいう「中間」という言葉には調査捕鯨の「調査」という言葉ぐらいの重さしかない)という形で私たちの子孫に「負の資産」として残す先送り政策は、とりあえず「今の経済活動に必要な電気さえ手に入れることができれば良い」という典型的な「逃げ切りメンタリティ」の産物である。
そこで、いくつか具体的な提案をしてみる。
1. 原子力発電所および中間貯蔵所の建設の即時停止(建設中のものも含む)
2. 原子力を含まない中長期エネルギー政策の策定
3. 中間貯蔵されている使用済み核燃料の早急な処分
4. 東京電力の一時国有化
5. エネルギー税の導入
1. 原子力発電所および中間貯蔵所の建設の即時停止(建設中のものも含む)
これに関してはわざわざ説明することもないと思うが、まずはここから始めないと何も始まらない。「もうこれからは原子力発電には頼れない」「使用済み核燃料をいつまでも貯蔵して問題を先送りすることはできない」という状況に追い込んでこそ、知恵も湧いて来るし、痛みをともなう改革も可能になる。
2. 原子力を含まない中長期エネルギー政策の策定
これはまさに「脱原子力」だが、さすがに今すぐすべてを停止するというのも現実的ではないので、中長期エネルギー政策を策定し、中期的には原子力なしの、そして長期的には石油や天然ガスの輸入に頼らないエネルギー政策を立てる。
3. 中間貯蔵されている使用済み核燃料の早急な処分
これは使用済み核燃料という「負の資産」の清算である。国内に処理施設を作るべきか、フランスあたりに有償で引き取ってもらうべきかは、具体的な試算をして決めれば良いが、 何の罪もない私たちの子孫に負の遺産を残すのではなく、これまで原子力から得られる安価なエネルギーを使い放題に使って来た私たち自身が、そのコストを負担するのは当然である。原子炉の廃炉も含めてそのプロセスは経済産業省と電力会社が責任を持って進めるが、その際の安全は、厚生労働省が監督をする(原子力安全・保安院は厚生労働省の下に置く)。
4. 東京電力の一時国有化
これは株主責任の追求と税金の節約である。東京電力の株価は、今回の原発災害で大幅に下がったが、まだ「紙くず」にはなっていない。それは「日本のインフラを担う電力会社を政府が倒産させる分けがない」という投資家たちの甘い読み、および「安いうちに買いたたいておいて、税金で救済されてまともな株価に戻ったら売り抜けて一儲けしよう」という投機家たちの欲があるからだ。ここは資本主義の原則にのっとり、原発災害の責任をまずは100%東京電力にかぶせたうえで、会社更生法を適用して倒産させ、株価をゼロにした上で、一度100%国有化する(そして後に上場させた時の利益は100%国のものとする)。
「結局税金で救済するのなら同じ」と誤解してしまう人もいるかも知れないが、救済すべきは「被災者」と「電力を提供する事業そのもの」であり、株主と経営者だけは絶対に救済しては行けない。 現状の株を完全な紙くずにしてから救済すれば、 現在の東京電力の株価相当の数千億円の税金の節約ができる。救済というのはまずは株価をゼロにすることにより株主責任を果たしてもらってからするべきことである。
ひょっとすると、倒産→国有化→再上場が必要なのは東京電力だけではないかも知れない、負の資産である使用済み核燃料の処理のコストは100%電力会社が負担すべきであり、それに十分な引当金がないのであれば、東京電力と同じ道をたどってもらうしかない。
5. エネルギー税の導入
この税の目的は2つある。
一つは原発災害の被害者の救済と脱原子力(使用済み核燃料および廃炉の処理費用を含む)に必要な財源の確保で、もう一つは省エネである。上の4つの政策の実行には莫大なコストがかかるが、そのための財源を赤字国債に頼っていたのでは(負の資産を子孫に残すという意味で)使用済み核燃料の中間貯蔵と同じである。また、いくら「省エネをしましょう」と訴えたところで、それだけでは日本全体のエネルギー消費量を20%とか30%とかのスケールで減らす事は不可能である。そこで、電気・ガス・ガソリンなどに省エネの必要度の応じた税金をかけることにより「冷房をかけるより窓を開けた方が経済的」な状況を作り出して、企業や個人が省エネをせざるを得ない状況に追い込む。
かなりの「痛み」を伴う政策だが、これぐらいのことをしないと日本は「万が一の場合には地震や津波そのものの被害よりも甚大な損害を与えるかもしれず、そうでなくとも大量の使用済み核燃料を負の資産として子孫に残しつづける」原子力からの脱却はできない。