飯田 スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマ、ですね。それが浜岡に続かないことを祈りますけれども。
小林 チェルノブイリなどでは、事故から10年以上経った後に子供たちのガンが増えたりしているそうですね。そういうことも、ちゃんとしたデータとして数値がとれないなどといって言い逃れをしているところもあるんですよね。
飯田 単純に放射線の被ばくという意味でいうと、確率的な影響の観点から集団でみていくと発ガン率を高めていることは間違いないと言っていいと思います。もうひとつ重要な違いがあって、それが外部被ばくと内部被ばくです。ブラジルとかイタリアなどはもともと自然からの被ばくが多いとか、飛行機に乗って浴びる被ばくというのは、レントゲンと一緒で、外から浴びるものなんですよね。それももちろん発ガン率を高める一因にはなる。でも今、福島原発から放出されて都内などで検出されているのは、内部被ばくを警戒しないといけない。
あれは体内に入ってしまうと居座り続ける可能性がある放射性物質なんです。内部被ばくと外部被ばくとでは、根本的に違っています。これは専門的になりますけど、放射線には、α線、β線、γ線という三種類と、プラスして中性子という大きく四種類があります。中性子は、福島原発で事故処理に当たっている人以外は、考えなくていいんですね。で、中性子とγ線が主に外から浴びる放射線で、α線とβ線が内部被ばく型の放射線。
まず、γ線と中性子というのは透過力がすごく強いんです。だからコンクリートとか鉄の壁もぶち抜きながら透過していく。透過していくので怖い部分と、逆に弾丸が貫通するような感じで透過していくので助かる部分があるんですね。
α線とβ線にはその貫通力がなくて、それこそ紙やアルミ箔一枚で防げるので、外部被ばくの怖さはあまりないんです。そのかわり、アルミ箔一枚通り抜けることができないということは身体の中に入ってしまうとそのまま体内に居座り続けるんです。α線というのはヘリウムの原子核、β線というのは電子なんですけど、それが体内でDNAをひたすらぶち壊し続けるんです。だから身体に入るとめちゃくちゃ怖いんです。
外部被ばくの方は瞬間の話ですから、そこでDNAが壊されても修復されれば終わるんですが、内部被ばくを起こす核種は溜まる場所が決まっていて、話題になったヨウ素131というのは甲状腺に入るから、甲状腺で一定の濃度が入ってしまうとほぼ確実にガンを発症してしまいます。それからセシウムは一旦肝臓を通って、筋肉でいわゆる骨肉腫みたいなのを起こしたり、生殖器のガンを起こしたりしてしまう。
小林 つまり今、報道されている情報は、僕らはどういうふうに対処すべきなんですか?
飯田 とりあえず首都圏での日常生活においては、「気にしないといけないけれども、気にしすぎても仕方がない」というレベルだと思います。東京の辺りは、ですね。
ただ、放射能濃度が相当高くなりそうなところだけは、本当に退避しないといけないですし、妊婦や乳幼児は特に注意が必要ですね。放射能はDNAに作用するのですが、 分裂している最中のDNAは感受性が高いので、妊娠初期とか、乳幼児とか育ち盛りは要注意です。子供たちの甲状腺も放射能の影響を受け易いので、なるべくならできるだけ原発から距離を置いたほうがいいと思います。これから何が起きるかは本当に分かりませんので、状態が悪化した場合には西日本への退避なども考えておいてもいいかもしれません。まだ今のところは容認レベルだとは思うんですが。でもすでに水道水に入って、300ベクレルとか500ベクレルなど検出されはじめているので。要警戒領域であることは否めませんね。
小林 水道水については、日によって放射能の数値が高かったり低かったりするわけだけれども、最終的には「合計で1年間にどれだけ摂取してしまうか」というところが問題だという説もあるじゃないですか。例えば、3日間100ベクレルの水を飲み続けるのと、1日だけ300ベクレルで残り2日はゼロベクレルの水を飲むのは同じことだと。あれは本当なんですか?
飯田 一応、そういう考えで良いと思います。ただし、その基準が本当に確かな数値がどうかというのはわからないのですが……。もうちょっと細かい話をすると、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準というのはかなりゆるいんですね。
放射線疫学の世界ではもっと細かい緻密な理論があって、それのリスクによっては、ICRPよりは10倍以上、発ガン率も含めて高いだろうという学説もあります。ICRPは内部被ばくのリスクを、あまり考慮しないで基準値を出していると言われています。