小林 すこし現実的な、これからの対応の話をしましょう。飯田さんは現状の原発体制に対して批判するだけではなく、エネルギーに対しての新しい提案もされていますよね。短期的には今年の夏のピーク、電力の消費のピークに、計画停電をやらなくちゃいけないと東電は呼びかけていますけれども、それをやらなくてもいいかもしれないという。夏場のピークの大口契約の改善について……、というところを教えてもらえますか? そもそもどういう契約が電力会社とあるんですか?

飯田 需給調整契約といって電力会社が個別の企業と交わしている「ピークになったときの需要を落としますよ」という契約があります。そのかわり、ちょっと値引きしてあげますよ、ということですね。

小林 なるほど。

飯田 それは「通告なしで即座に落とす」「1時間前通告」「3時間前通告」という3種類あるんです。それによって割引率が違います。まあ、私契約で価格は秘密なので出てこないんですけど。

企業も始めから契約しているわけですから、じゃあそれを減らされるときにはここを落とせばいいと用意できているんです。これを中心的な施策にして、もう少し小口の500キロワットから2000キロワットの契約になると、件数が一気に何万件と増える。さらに小口の50キロワットから500キロワットくらいまでいくと、これはもう何十万件と広がるので、今の市場メカニズムのピーク価格をあげる対応で十分に電力量が下がると思います。

最後はもうちょっと小口の家庭などですが、こちらは価格をあげてもあまり減らないんですよ。企業にとって電気料金は切実ですが、家庭の方々は基本料金や電気料金があがってもあまり気にしないようですね(笑)。ですから、小口契約者への対策は、基本契約料を一律2割減らす代わりにアンペアを減らす、ということをしたらいいと思うんですよ。

つまり、家庭とかだと今、40アンペアや50アンペアが標準ですよね?この40アンペアを30アンペアにするとか、50アンペアを40アンペアに減らす、という風にするとピークが2割ほど減ると思われます。そうするといま東電管内にある家庭分の1500万キロワットが、一気に300万キロワットまで落ちる計算になるんです。

小林 それくらいアンペアが減ってもそんなに困らないけど、ブレーカーをとばしたくはないから、使う電気量を押さえる工夫はしますよね。

飯田 そうそう。例えば、電子レンジとオーブントースターとヘアドライヤーなど、電力消費量の大きい機器を同時に使うとブレーカーが落ちちゃうかもしれないけど、冷蔵庫やパソコンくらいなら大丈夫ですから。その一番電気を食うものを同時に使わなければ問題ないですよ、というようなことも一緒に伝えてあげればね。

小林 なるほどね。

飯田 この対策を一気にやれば、この夏も計画停電なしにクリアできますし、企業活動やライフラインにも影響がない。

今年の夏を乗り切れば、同じ対策で数年は大丈夫ということになりますよね。ただし今は火力発電を目一杯使っているのでCO2の問題と、それから、エネルギーコストの問題という2つの問題があって。特に今、原油も石炭も、ただでさえ上がり気味だったのに、これで世界的に原子力が減っていくとなると、ますます原油と石炭は、投機マネーで高騰していくことが予想されます。

10年後、50年後を見据えると、大胆なエネルギーシフトを加速していくということが必要だと思うんですね。

まず省エネ・節電をあと10年で20%、これを我慢の節電ではなくて、問題のない快適な節電でやっていこうと。

小林 快適な節電というのは、さっき話していたこと以外にどういう手があるんですか?

飯田 一番大きいのは、暖房とか給湯で、電気を使っているものをできるだけガスとか、さらには自然エネルギーに代えるということですね。電気で熱を作るのは、昔から省エネルギーの天才といわれたエイモリーー・ロビンスが、「電気ノコギリでバターを切る」と表現しているんですね。それはそもそも、電気を作るときに、火力発電所では、熱エネルギーの4割を電気として取り出すのがやっとで、残りの6割が利用されずに捨てられているわけです。そこからまた熱を作るというのは無駄ですよね。

特に効率が悪いのはお湯と暖房。エアコンはまだ効率がいいんですけど、電気のヒーター型の床暖房とか電気ヒーターは正直効率がよくない。もっと専門的なことをいうと、エアコンの暖房というのは生理的には人間にとってあんまりよくないんですね。輻射(ふくしゃ)暖房といって、壁の面とかあるいはストーブから直接あたる熱のほうが、原理的にも快適性も非常にいいんです。

輻射熱とは、絶対温度の4乗の差で熱が真空中を伝わるというものです。ですから輻射暖房だと、自分の体が冷たいときには温かい薪ストーブやお湯のパネルヒーターなどから自分の身体にわーっと熱が入ってきて、身体が温まって温度差がなくなると熱が入ってこなくなるんですよ。そこが快適なんですね。だからヨーロッパの住宅とかは輻射暖房しか使ってないですよ。細かい話ですけど(笑)。