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東日本大震災の影響で、首都圏を中心に繁華街のネオンが消え、経済活動が沈滞ムードに包まれる。一方で、節電が暗さに対する日本人の意識に変化をもたらしている。「陰影」という日本建築の概念に光が当てられ、夜の暗さを再評価する機運が出てきた。
昼から夜へ、明るさの谷間に当たる「たそがれ時」に対する意識は、国民性や気候風土が反映される。日本の夜の明るさや派手なライトアップに長年、疑問を投げかけてきた東京工大の乾正雄名誉教授(建築工学)によると、日本では日没の1時間前に照明をつけるが、ヨーロッパではほぼ日没の頃。明るさの余韻を惜しむかのように照明をなかなかつけないという。
乾名誉教授は、過度に明るい夜間の環境が「人に常に動き回ることばかりを強いて、じっと考える能力を喪失させたことはうたがいようがない」と、『夜は暗くてはいけないか』(朝日新聞社、1365円)で指摘する。確かに、こうこうと輝く蛍光灯のもとでは哲学することは向かない。
谷崎の『陰翳礼讃』にある一節。〈暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った〉